もののけ姫「生きろ、そなたは美しい」の知られざるキャッチコピー制作の裏側を一挙公開!

宮崎駿監督のジブリアニメ映画「もののけ姫」。

敵対する身でありながら、しだいにもののけ姫であるサンに惹かれ、芯のぶれないアシタカに感情移入された方も多いのではないでしょうか。

今回は、もののけ姫の名キャッチコピーである、「生きろ、そなたは美しい」がどのようにしてできたのか、そしてその意味を追っていきたいと思います。

「生きろ、そなたは美しい」この10文字ほどのキャッチコピーにどれほどの思いがこめられているのか、読めば納得の物語です。

ではさっそく見ていきましょう!

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「生きろ、そなたは美しい。」のコピーライターは糸井重里

「もののけ姫」のキャッチコピーが「生きろ、そなたは美しい。」になる過程を知っていますか?

実は、この10文字足らずのコピーの中には、多くの紆余曲折があったんです。

「もののけ姫」は1997年に公開された作品で、興行収入は1位「千と千尋の神隠し」、2位「ハウルの動く城」に次ぐ第3位。(304億円/2350万人/2001年)

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この「もののけ姫」が大ヒットを収めた背景には、映画のキャラクター・ストーリー性もさることながら、このキャッチコピーの効果があるのではないでしょうか。

実際に、ジブリ映画のコピーランキングでは、もののけ姫の「生きろ、そなたは美しい。」が第一位になっています。

  • 1位 生きろ。(もののけ姫) 23.0%
  • 2位 4歳と14歳で、生きようと思った。(火垂るの墓) 19.2%
  • 3位 生きねば。(風立ちぬ) 20.6%
  • 4位 おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。(魔女の宅急便) 16.3%
  • 5位 カッコイイとは、こういうことさ。(紅の豚) 12.0%

マイナビウーマンより

私も公開当初に、この「生きろ、そなたは美しい。」というキャッチコピーを見て、胸にズシンとくるものがありました。

私たちが日々感じている不安や閉塞感。もっと力強く「生きる」ことの大切さを感じたこの映画は、ジブリ映画の中で大好きな映画の一つです。

数多くのジブリ映画でプロデューサーを務める鈴木敏夫さんは、この映画にこめられたメッセージを伝えるため、今作もコピーライターの糸井重里さんに依頼。

糸井重里さんは、言わずと知れた超有名コピーライターで、企業・ジャンルを問わず多くのコピーを手掛けています。

糸井重里のキャッチコピー「ジブリ」篇

糸井重里さんが手掛けたジブリ映画のキャッチコピーは数多くあります。

「このへんないきものは まだ日本にいるのです。たぶん。」 – 映画『となりのトトロ』

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「4歳と14歳で、生きようと思った」 – 映画『火垂るの墓』

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「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」 – 映画『魔女の宅急便』

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「好きなひとが、できました。」 – 映画『耳をすませば』

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「トンネルのむこうは、不思議の町でした。」 – 映画『千と千尋の神隠し』

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「ふたりが暮らした。」 – 映画『ハウルの動く城』

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紹介していない他の作品もありますが、これだけの数々の作品を手掛けていた糸井重里さん。その中でもやはり、「生きろ、そなたは美しい。」は別格のインパクトがありますね。

もののけ姫のキャッチコピーが「生きろ、そなたは美しい。」になるまで

プロデューサーは鈴木敏夫さんと糸井重里さんとのやりとりはFAXでした。この映画が公開されたのはなんと20年以上も前の1997年で、当時はEメールが普及し始めてた頃。

原稿のやり取りはFAXからメールにとって代わりましたが、FAXの文字のかすれ具合や、手書きの持つ暖かさは今見ると新鮮ですね。

ちなみに1997年の大きな出来事は次の通り。

1997年の出来事

  • サッカーワールドカップ・フランス大会に日本が初出場を決める
  • 映画「タイタニック」が公開(興行収入は「アバター」に抜かれるまで歴代第一位)
  • ファイナルファンタジーⅦが発売、全世界約972万部の大ヒット

映画「もののけ姫」の公開もこれらの出来事と並び、大きな話題となりました。

では、もののけ姫のキャッチコピーが「生きろ、そなたは美しい。」となるまで、鈴木敏夫さんと糸井重里さんがどのように悩み、考えてきたのか、その過程を追っていきたいと思います。

最初のコピー案は「ラブストリー」色の強いコピーに

鈴木敏夫さんが糸井重里さんに依頼したのは、まだ作品も完成していない中の1996年3月21日。依頼の中には、ストーリーの概要と「コピーの1日も早い完成を首を長くして待っています」という言葉。

やっと、Cパートが半分近く完成しました。取り急ぎお送りする次第です。

このあとの展開は、乙事主たちとタタラ一族の戦いが、まるでボスニア・ヘルツェゴヴィナの内戦よろしく繰り広げられる筈です。巻き込まれるアシタカとサン。

しかし、ふたりは、かつてのヒーロー、ヒロインのように全体を解決すべく大活躍するわけではありません。戦いの中で「惨事」を目撃することになるんです。

コピーの一日も早い完成を首を長くして待っています。よろしくお願い致します。

鈴木敏夫

そして最初のコピー案が届いたのは、鈴木敏夫さんが手紙を宛てた2か月半後の6月4日でした。最初のコピー案は、以下の4つ。

  • 「おそろしいか。愛しいか。」
  • 「おまえには、オレがいる。」
  • 「惚れたぞ」
  • 「ひたむきとけなげのスペクタクル。」

これらを見ると、どの案もラブストーリー色が強いものとなっていますね。糸井重里さんは当初、ラブストーリーを前面に出したら気持ちいいだろうなあと考えていたようです。

ちなみに、ないとは思いますが、もし、このままラブストーリー路線でキャッチコピーが決まったらどうでしょう。

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う~ん。やっぱり全然違いますよね。表面のストーリーを掬っている感じがします。

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ちなみに統一して終わりに「。」がついているのは糸井重里さんのこだわりのようで、「生きろ、そなたは美しい。」にも「。」が採用されており、余韻を感じさせるように感じます。

このFAXが糸井重里さんから鈴木敏夫さんに届いた当日中に返信が送られます。

再考を!

宮崎も「ちがう」というし、小生もちがうと思いました。
愚にも着かない理屈を並べるなら、

1.ラブストーリーといい切るなら、その背景となる混沌とした世界の広がりが欲しい。
2.物語の行き着く先が混沌としているのに、いずれも「答」が出てしまっている。答えのないコピーは?

てなところでしょうか。勝手ばかりいってスミマセン。宜敷くお願いします。

小生が気になっていた台詞は、これです。
「そなたは、美しい…」
これ、宮崎駿がいっているという気もするのですが、
如何でせう。この前、糸井さんが「カッコイイとはこういうことさ」も
「タヌキだってがんばっているんだよ」も宮さんがいっているのを思い出した次第。
では、待っています。 

鈴木敏夫

といった提案や意見が書かれていました。「そなたは、美しい」の部分は、宮崎駿さんが言っていたことで、鈴木敏夫さんのアイデアだったわけですね。

宮崎駿さん本人がいっている言葉でキャッチコピーになったものは

「カッコイイとは、こういうことさ。」 – 映画『紅の豚』

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「タヌキだってがんばってるんだよォ」 – 映画『平成狸合戦ぽんぽこ』

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これを聞いて妙に納得。「タヌキだってがんばってるんだよォ」については、宮崎駿さんの本音というか、悲痛な叫びに聞こえてきます(笑)

この愛の告白ともとれる「そなたは、美しい…」というセリフの中から、最終的に「生きろ。」を見出していくんですね。これからどういう風に変わっていくのでしょうか。

迷走の時期:観客の顔が見えない

2回目の案は2週間後の6月18日。ラブストーリーが軸となっている物語に対して、何を伝えるのか、このころの糸井重里さんには観客の顔が見えない状態でした。

2回目のコピー案は、以下の7つ。

  • 「だいじなものは、ありますか。」
  • 「昔々は、今の今。」
  • 「おまえは、まぶしい。」
  • 「死ぬのと、生きるの、どっちが好きだ。」
  • 「死ぬなっ。」
  • 「それでもいい。私と共に生きてくれ。」
  • 「ハッピー?」

ラブストーリー色が薄まり、もののけ姫の物語から、伝えたいメッセージがあちこちに動き始めているのが見て取れます。

鈴木敏夫さんの返信に、キャッチコピーも物語の方向性も迷走している様子が見て取れます。

前略 糸井重里さま

「も、もう1回! お願いします。大体こういうのは、3度目がいいんだと、ダレか偉い人もいって…いませんでしたっけ!? ともあれ、お手をわずらわせますが、よしなにご検討のほどを。ところで、告白しますが、ぼくもこの映画の解説文を書こうと思い立ち、すぐにつまづき、いま思い悩んでいる処です。トホホ」

名コピーを待ちます。「これだ!」というやつ。ポスター・予告篇etc 全部stopさせて待ってます。ボク、プレッシャーかけてますね。スミマセン。ついでに、宮崎も期待しています。ともあれ、糸井さんだけが頼りです。

糸井重里さんのみならず、プロデューサーの鈴木敏夫さんも悩みに悩み、「もののけノイローゼ」になりかけた3回目。この時提出されたのは以下の通り。

  • 悪からでも善からでも、おまえを守る!
  • あなたは、何を守る?
  • 弓を誰に弾く!?
  • なぜ、俺は生まれてきた。
  • LIFE IS LIFE!
  • 化けものだらけ。
  • 神々はなつかない。
  • 森には、おそろしい神々がいる。

そして4回目の7月1日、ついにあのコピーが生まれます。

ついに「生きろ、そなたは美しい。」が生まれる

糸井重里さんから送られてきたコピーは、今までの中で、もっともシンプルなものでした。

  • 「生きろ。」

鈴木敏夫さんから送られてきたFAXには、「生きろ。」や「近い!」の文字が今までになく太字で書かれ、確かな手ごたえと喜びが伝わってきました。

前略 糸井重里さま

生きろ。
ぼくは凄くよいと思いました。

たった3つの文字なのに、
そこに込められた時代性。

イケルと思いました。

宮さんにコピーを見せつつ、僕の考えを話すと、

「近い!」とひとこと。
(似てますが「ちがう!」ではありません。念のため)

できれば、もうひとひねりといい出しました。
最後のお願い、聞いて戴けるでせうか。
宮崎の断っての願いということで。 以上

鈴木敏夫

しばらく検討のうち、ようやく宮崎駿さんも納得し、
伝えるべき方向性がハッキリしました。7月7日

前略 糸井重里さま

宮さんにもうひと押ししました。
「不安」を抱える現代人に、必要不可欠は、

生きろ。

この力強いコピーでした。
いろいろあって宮さんもついに納得しました。
というわけで、本当に
ご、ご苦労様でした。
「迷い道」に誘ったりしてスミマセンでした。
これで前に進めます。
ともあれ遅くなりましたが、御礼のFAXです。

鈴木敏夫

アイデアを出して迷走を繰り返した先には、もっともシンプルで研ぎ澄まされた言葉が生まれた瞬間です。

「生きろ、そなたは美しい。」から学ぶ、言語化の大切さ

この鈴木敏夫さんと糸井重里さんとのやり取りを聞いて、言葉の大切さを強く感じました。

宮崎駿さんが映画「もののけ姫」を制作する過程で、伝えたい大切なものは映画のストーリーの中に入っていますが、それをカタチにして伝えるのがキャッチコピーの醍醐味。

何か気持ちを伝えたいけど言葉にできないことは誰にでもあるのではないでしょうか。

そのモヤモヤとした気持ちを言語化することで、伝えるべき相手だけではなく、伝える自分自身にも腑に落ちる経験があるはずです。

はじめは表面に現れやすいラブストーリー色を出し、どんどん奥にあるメッセージを掘り起こしていく。

その作業は、ノイローゼとなるほどの「迷い道」でありましたが、この「生きろ、そなたは美しい。」というキャッチコピーがつくことで、より「もののけ姫」のストーリーに奥深さが与えられ、多くの人が知る大ヒットへとつながったと思います。

言葉にすることって、大切ですね。

安易に人の言葉を受け売りするのではなく、表面的な伝え方だけでなく、深く考え続ける姿勢を見習いたいと強く感じました。

まとめ

  • ジブリ映画「もののけ姫」は1997年に公開され大ヒット、興行収入はジブリ映画の中でも第3位を記録した。
  • 「もののけ姫」のキャッチコピー、「生きろ、そなたは美しい。」は、多くの人の胸を打った名コピーとして人々の記憶に残っている。
  • キャッチコピーをつくったのは糸井重里さん。プロデューサーの鈴木敏夫さんとのやりとりでこのコピーは生まれた。
  • 「そなたは美しい…」は鈴木敏夫さんのアイデア。このセリフは実は宮崎駿さんが言っていたことだった。
  • キャッチコピーができるまでの過程は、苦悩の連続。ラブストリーから始まった方向性は迷走の一途をたどり、二人はもののけノイローゼになりかけていた。
  • 最終的に完成したキャッチコピーに、鈴木敏夫さん、そして宮崎駿さんも太鼓判。「生きろ。」に時代性が込められている。

いかがだったでしょうか。「生きろ、そなたは美しい。」には、これほどの紆余曲折があったことを知りませんでした。思いを言語化することの大切さをこの記事で感じてもらえれば幸いです。

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