「新しい仕事をうまくやっていけるかどうか不安」
「貯金ゼロで収入も少なく、これから生活していけるかどうか不安」
「自分が病気になったら、どうやって親や家族をさせていけばいいか不安」
不安という感情は、漠然としていて悩んでも悩んでもキリがありません。そもそも不安とは一体何でしょうか?
不安の正体をつかむポイントは時間軸。不安を時間軸でとらえることで、焦りや恐怖といった感情についても理解が深まり、不安にどう向き合っていけばいいのかが明確になります。
では、さっそく見ていきましょう。
目次
不安と恐怖の正体
不安を時間軸でとらえるとはどういうことなのでしょうか。と、その前に、まずは不安と恐怖の特徴を追って見ていきましょう。
不安の特徴
不安という感情には、次のような特徴があります。
- 1)未来の出来事に対して起きる感情である
- 2)対象が漠然としており、どうしたらいいのかはっきりしないときに起きる
- 3)何かをしなければならないと感じるときに起きる感情である
では実際に、「貯金ゼロで収入も少なく、これから生活していけるかどうか不安」というケースで見ていきましょう。
「これから生活していけるかどうか」というのは、過去でも現在でもなく1)の未来の出来事です。
また、不安の対象が「これからの生活」といった漠然としたもので、それに対する手立てがはっきりしていいないという2)にも当てはまります。
そして、このままの状況ではいいとは感じておらず、何らかの対処をしないといけないと思っている、つまり3)の特徴に当てはまります。
不安といった感情は、1)~3)に当てはまる環境や状況で生み出される感情ということが理解できたかと思います。
恐怖の特徴
次は恐怖を見ていきます。恐怖という感情には次のような特徴があります。
- 1)現在直面している出来事に対して起きる感情である
- 2)対象がはっきりとしており、どうしなければならないのかがある程度決まっている時に起こる
- 3)危機的状況で、すぐに対処が必要なときに起きる感情である
では、先ほどの「貯金ゼロで収入も少なく、これから生活していけるかどうか不安」と似たようなケースで、
「生活がギリギリの状況なのに、主人が病気になり仕事が続けられなくなり恐怖を覚える」という、不安ではなく恐怖を感じる状況で考えてみましょう。
まず、主人の病気という問題がすでに起こっているので、1)の現在直面しているに当てはまります。
また、対象がはっきりしています。主人の病気を治すために入院したりお薬をもらわなければいけませんし、これからの仕事に対して、生活に対しても何らかの対処をしなければなりません。よって2)のケースにも当てはまります。
そして、不安を感じるケースとは違って、すぐに対処することを迫られていますので、3)にも当てはまります。
不安と恐怖でご紹介したケース、状況は違いますがとても似ていますよね。それもそのはず、実際この2つのケースの違いは「時間の経過」なんです。
不安と恐怖は時間軸で正体が明らかになる
不安と恐怖の正体を解くポイントは「時間軸」です。
先ほどのポイント整理すると、不安という感情は未来の出来事に対して起きる感情です。それに対して恐怖は、現在直面している出来事に対して起きる感情です。
つまり、出来事の違いではなく、起きている状況の時間軸の違いによって、不安を感じるか、恐怖を感じるかが決まってきます。
この特徴を図に表すと以下のようになります。
時間軸で考えてみると、まず不安を感じ、それから恐怖に変わるという流れになりますね。
また、そのほかの違いとしては、不安はまだ起きていないことを想像するのに対し、恐怖は現在起きていることにプレッシャーをかけられます。したがって、不安は内側、恐怖は外側といった方向性の違いもあります。
- 不安:起きてないことに対して、自分の内側から湧き起こる感情
- 恐怖:現在起きていることに対して、外からの圧力を受けた時に感じる感情
以上、不安と恐怖の正体、そして違いについて述べてきましたが、この二つには共通点もあります。
それは、自分の身を守る感情ということです。
「自分の身を守るために、何かしらの行動を起こさなければならない」
私たちが不安や恐怖といった感情を感じた時、その奥にはそういった目的があることを知ることが、対処する上において重要なポイントなのです。
不安・焦り・恐怖の関係
先ほどは不安と恐怖の正体を、時間軸からお伝えしました。この2つの感情と関係があるものとして、焦りがあります。
では、不安・焦り・恐怖はどういった関係になっているのか、先ほどと同じく時間軸を使って見ていきましょう。
焦りは不安と恐怖の中間にある
もう一度不安と恐怖を整理しますと、不安が未来の時間軸に属している感情で、恐怖は現在の時間軸に属している感情でした。
では、焦りはいつの時間軸かというと、不安と恐怖の中間、つまり近未来に位置づけられる感情なのです。
焦りの特徴
焦りには次のような特徴があります。
- 1)近い未来に対して起きる感情である。
- 2)対象ははっきりしているが、準備不足であったり気持ちがそこに向いていないときに起こる
- 3)何らかの対応がしないと後が怖いと感じた時に起きる感情である
では、焦りについても、先ほどからお伝えしているケースで見てみましょう。
不安を感じる状況は「貯金ゼロで収入も少なく、これから生活していけるかどうか不安」で、
恐怖を感じる状況は「生活がギリギリの状況なのに、主人が病気になり仕事が続けられなくなり恐怖を覚える」でした。
焦りはというと、その中間、「貯金が増えるどころか毎月赤字が続いていて、主人の具合が悪くなり焦りばかりが募る」といった形になります。
主人の具合が悪くなっていて、1)のように近く何らかの対応が迫られる状況にあります。
そして、対象も主人の状態とそれに伴う経済的負担と明確ですが、毎月赤字となっており、いざという時の準備ができていない2)のような状況です。
今はまだ直面していないけれど、何らかの対応をしないといけないという3)の状況にもなっていますよね。
不安・焦り・恐怖の時間軸
つまり、時間軸に沿ってみていくと、未来→近未来→現在と時間が移り行く中で、不安→焦り→恐怖と感情が変化していきます。
先ほどの図に焦りを追加してみます。
このことから、不安・焦り・恐怖のいずれかの感情を感じた時は、時間軸を意識すると、自分がどのステージにいるのかを知る手掛かりとなります。
不安を感じた時は、むやみやたらに対処しなければならないと焦るのではなく、自分がどんなことに不安を持っているのか、そしてどんなことをまず始めていけばいいかを考えればいいわけですし、
反対に恐怖を感じた時は、何もしないのではなく、恐怖を抑えるためにどんなことができるかをまず考え、実行することが一番大事だということがわかります。
焦りについても、意味もなく焦りの感情が出ているわけではなく、何らかの対処をするよう警告を出してくれているわけですから、さらに必要以上に自分にプレッシャーをかける必要はないことがわかります。
不安という感情の本当の目的
ここまでを振り返ってみると、どの感情についても、「自分の身を守るために、何かしらの行動を起こさなければならない」という目的があることがわかりました。
中でも不安は未来の感情ですから、長く続くので、なるべく感じたくない、消してしまいたい感情のはずです。
ただ、よく考えてみると、動物は未来を憂いて不安になるようなことはありません。いくら過酷な状況にあっても未来のことを考えられず、未来のために行動を起こすことができないのです。
そういった意味で、不安はとても人間らしい感情です。
不安が少ない方がもちろんいいのですが、では、まったく何一つ不安を感じられない人生だと思うとどうでしょうか?
幸せな人生を目指すこともできないし、そのために努力することなく、平凡とただ生きるのみです。
つまり、よりよい人生を送ろうとするからこそ、人間は不安になるのです。
まとめ
- 不安は、未来の出来事に対して、対象や対処方法がはっきりしていない時に起こる。
- 恐怖は、現在直面している出来事に対して、対象がはっきりしており、すぐに対処が求められる状況で起こる。
- 焦りは、不安と恐怖の中間に位置し、近いうちに対処しなければならない問題がある時に起こる。
- 不安・焦り・恐怖は、いずれも自分の身を守り、何らかの行動を起こさせる目的を持った感情で、違いは時間軸にある。
- 不安は人間だけが持つ感情。よりよく生きるためには不安という感情が必ず起こる
いかがだったでしょうか。不安・焦り・恐怖は時間軸を意識することでその正体が見えてきたと思います。
どの感情もそうですが、感情には目的があります。あまり感じたくない不安・焦り・恐怖ですが、これらは自らを変えていくための行動を促す、重要な感情ということが理解できたと思います。
ただ、不安や焦りに押しつぶされないよう、うまく利用していくためには、感情のコントロールが必要です。感情のコントロールについては、別の記事で紹介していきますので、そちらも併せてご覧ください。
不安の解消法・対処法についてはこちらの記事をどうぞ。
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